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 俺はいつも自分の事ばかりだ。すぐに周りが見えなくなってしまう。美桜の胸に耳を当て、心臓の動きを確認すると、目の前の美桜が複雑そうな顔で頭を撫でてくれている。

「大丈夫です」

 そんなわけがないだろう。

 あの日、やっと恋人になれたというのに、目の前の男は、自分の胸に顔を寄せ妹の心臓に話しかけているのだ。とんだシスコン野郎だ。


 しかし美桜はそんな俺の頭を優しく包み込み、微笑んだ。人を優しく包み込み、癒やしの魔法でも使うかのような、まるで聖女のような優しさ……。この優しさが、子供達を呼び寄せる。病棟でも美桜はいつも子供達に囲まれている。子供達の笑顔を引き出すのはいつでも美桜だ。

 正悟は美桜の後頭部を大きな手で包み込む様に引き寄せ、近づいて来たぽってりとした唇に自分の唇を重ねた。重ねられた唇を離すと同時に「チュッ」と、リップ音を立てると、美桜が真っ赤な顔で見つめてくる。

 そんなうぶな反応をする美桜が愛おしくて仕方が無い。

 もう一度唇を寄せ、角度を変えて何度かキスを繰り返す。わざとチュッチュッとリップ音を立てると、更に顔を赤くする美桜が可愛すぎる。美桜が呼吸をするため口を開いた、俺はこことぞばかりに美桜の口内に舌を侵入させた。すると柔らかい舌がたどたどしく俺の舌に触れてくる。その動きさえも可愛らしくて、俺はその舌を必要にからめ取った。存分に美桜の舌を堪能してから唇を離すとトロンッとした表情で美桜が見上げてくる。


「気持ちよかったか?」



 俺の問いに、美桜は恥ずかしそうに俯いてからコクリと頷いた。



 ふう……今日はこのぐらいにしておくか、これ以上美桜に触り続けていたら自制がきかなくなりそうだ。

 俺は美桜の頭を優しく撫で、深呼吸を繰り返すと、自分の中心に集まる熱をごまかした。