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 それから数日が過ぎ、本日夜勤の美桜はドキドキと、高鳴る鼓動を感じながら仕事をこなしていた。それというのも、今日は樋熊先生も夜勤だからで……。一緒の夜勤だからって何かあるわけでも無いのだが、ソワソワとしてしまう。樋熊先生の事が好きだと気づいてしまってから、気持ちが勝手に暴走してしまうようで、自分ではどうにも出来ない。ずっと好きだという気持ちをセイブしてきたのも原因なのかもしれない。

 胸をときめかせながらも、正悟の『さくら』と愛おしげに呼ぶ声が耳から離れない。

 気分が高揚したり、落ち込んだりを繰り返す日々が続いている。そして今も、樋熊先生を思いドキドキしたところで、さくらさんを呼ぶ樋熊先生を思い出し肩を落としていた。

 いけない。

 今は仕事中なのに……首を左右に振っていると、副主任に声を掛けられた。

「この診断書、樋熊先生に渡したいんだけど、手が離せないから美桜さんお願いできる?」

 副主任からのお願いに美桜は素直に返事を返した。

「はい。大丈夫ですよ」

 美桜は副主任から診断書を受け取ると、正悟の元へと急いだ。それは副主任からのアシストだということに、気づきもしない美桜。



「少しお節介が過ぎたかしら……」

 そう思いながらも、うまくいって欲しいと願う、看護副主任だった。