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 美桜はマンションの自室にて、ベッドに寝そべり夜勤で疲れた体を休ませながら溜め息を付いた。

「はぁーー」

 救うことの出来なかった命に思いをはせる。しかしそれは仕方の無いことだった。大島さんの心臓は何度も発作を繰り返していて、何時何が起きても仕方のない状態だった。病院に入院してきた時には手の施しようが無いほどの状態で、次に大きな発作が起こったら助からないだろうと言われていた。本人も家族も納得していた。

 だから昨日、発作を起こした大島さんを見ても、娘さんや奥さんは悲しくはあっても、パニックを起こすことは無かった。

 覚悟が出来ていたから……。

 すすり泣く家族の声が、姿が脳裏に浮かぶ。

 美桜は両手をギュッと握り絞めると、自室の天井を見つめた。過去に囚われていてはいけない。前を向かなければ……患者さんは一人では無いのだから。