この思いに気づかないふりをしてきたが、限界だった。高鳴る心臓が、思いが全てはこの人が好きだと告げていた。

 今日も、正悟に頭をガシガシと乱暴に撫でられ、顔を赤く染めながら怒ると、正悟の口角が上がっていることが確認できた。長い前髪と眼鏡のせいで、全体の表情はわからないが、笑っているようだ。

「じゃあ、俺はこれからカンファレンスだから」

「あっ……はい。行ってらっしゃい」

 ポンポンっと美桜の頭を軽く叩くと、正悟はカンファレンス室へと向かって行く。美桜は叩かれた頭に手を乗せ、ボーッと正悟の後ろ姿を目で追った。

 大きな手だったな。

 大きくて温かくて、優しい手だった。

 正悟を思うと体が熱くなる。

 重傷だよー。

 顔を赤く染める美桜を見つめ、ナースステーションにいるナース達は溜め息を付いた。

 この二人、さっさとくっ付けば良いのにと……。

 二人の様子は端から見ても、もどかしい物だった。思い合っているというのに、ワザとそれに気づかないふりをしているかのようで、じれったい。

 どこぞの高校生だ。

 このジレジレ状態……。

 こっちの精神状態が持たないわ。


 連日続く、二人のジレジレ状態に、スタッフ達は限界を迎えようとしていた。

 そんなある日、あの人がやって来た。

 外国からの来訪者が……。