*::*


 紬の母親から報告を受け、紬と陽希の様子を廊下から見守っていた美桜は、両手で口を覆い涙を流した。

 良かった……仲直り出来てホントに良かった。

 そんな美桜の後ろに黒く大きな陰が近づいてきた。

「立ち聞きか?」

「ひょぇーー!」

 優しく響く声……振り返らずとも、この声の持ち主が誰なのかわかる。最近やっとこの声になれてきたと思っていたけれど、耳元で囁かれた正悟の声に、吐息が混ざり鼓膜が震える気がした。

 思わず変な声を出しながら仰け反った美桜は、囁かれた方の左耳を手で覆いながら正悟を睨みつけた。顔に熱が集まり、鏡を見なくてもわかる。きっと私の顔は顔真っ赤に染まっていることだろう。

「樋熊先生!後ろから急に声を掛けてくるのは止めて下さい。ビックリするじゃ無いですか!さっきまで寝ていたのにどうしたんですか?」

 美桜は紬の部屋の中にいる二人に気づかれないよう、小さな声で声を荒げた。

 もう、無駄にイケメンボイスなんだから。

 そっと、正悟に視線を向けると、口角が少し上がっている。先生も二人のことを気に掛けていてくれてたんだ。そのことがうれしくて、美桜は微笑んだ。