学校でも自分の居場所が無くなった。感情を無くし笑わなくなった私から、友達が離れていく。クラスで浮いてしまった私はいじめの対象となった。それは必然とも言うべき状況だったのだが、特に悲しいという感情も無いため学校で何が起きても平気だった。14歳になり、受験を控えるようになると、いじめは更に酷くなり、受験生達の格好のストレスのはけ口となっていた。物がなくなったり、壊されたりすることが日常化してく。どうしても必要な物は親に頼まなくてはならなくなるのだが、それを話すと母親が怒りを露わにしてきた。

「あんた、またなの?いい加減にしなさいよ。私の気でも引きたいの?そんな無駄なことはやめなさい」

 そんなつもりも無いのだが、浴びせられる言葉に、心の奥底にしまい込んだ悲しみがジワジワと顔を出してくる。

 お母さん、そんな言葉聞きたくないよ。お母さんは気づいていないけど、今日は私の誕生日だよ。今日ぐらい優しい言葉を掛けてくれても良いじゃない。

 悲しみが、涙となって溢れ出した。

 私に「誕生日おめでとう」と、声を掛けてくれる人はこの世界にはいない。私の誕生を喜んでくれる人がいないなら、生きていても仕方ないと思った。

 陽希はお風呂場でカミソリの刃を左の手首にあてた。するとカミソリの刃がひやりと冷たくて、一瞬躊躇してしまったが、迷うことは無かった。

 死んで楽になろう。

 陽希は右手に力を入れ、左手に当てていたカミソリを一気に引いた。

 そこからはあまり良く覚えていない。温かな血が手首から流れ出し、お風呂場の床を赤く染めていくと、なぜか安堵していた。