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「はい。紬ちゃん、最後に採血を採ってお終いだよ」

「えーー。ヤダーー。」

 だだをこねる紬の元へ陽希がやって来た。

「何?紬どうしたの?」

「ひなちゃん、血をとるんだって」

 それを聞いた陽希は、クルリと後ろへ振り返ると、来たばかりだと言うのに出て行こうとしていた。

「ふーん。お邪魔みたいだから、私は帰るね。時間かかるんでしょう。じゃあね」

「えっ、ダメ!ひなちゃん待って、すぐとってもらうから。美桜おねえちゃんお願い」

 陽希ちゃんすごい。いつも採血するのに時間がかかる紬ちゃんが自分から採血されたがるなんて……。言い方はあれだけど、ホントに仲良くなったのね。

「美桜おねえちゃん早く、ブスッとやっちゃって」

「ブスッとって……わかった。一発で終わりにするからね」

 目をギュッとつぶり拳に力を入れる紬の腕に、美桜は採血用の針を刺すと採血管3本分の血を採っていった。

「はい。終わったよ」

 美桜の言葉を聞き、紬がそっと目を開けると、紬の顔を見た陽希がからかうように笑った。

「ぷっ……何泣いてるのよ。赤ちゃんね」

 そう言って陽希が吹き出した。

「赤ちゃんじゃないもん」

 ぷくっと頬を膨らませる紬だったがハッした後、陽希をマジマジと見つめ呆けた。

「ひなちゃんの笑った顔、初めて見た」

「うるさいわね。私だって笑うわよ」

 陽希が恥ずかしそうに、赤く染まる頬を隠すように顔をプイッと背けた。それを見た紬がケタケタと笑い、病室に二人の楽しそうな笑い声が響き渡った。