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 最近やたらと視線を感じることがある。

 何だろう?

 そう思い周りを見渡すと、必ずと言って良いほど樋熊先生と目が合う。その視線は恋愛感情と言うよりは観察をされているといった感じの視線で、ものすごく居心地が悪い。

 何だろう。ものすごく気まずい感じ……。

 目が合っても微笑まれるわけでも無く、無表情。

 とりあえず正悟の視線に気づかないふりをして仕事をしていると、突然声を掛けられた。

「坂口さん」

「ひゃいっ」

 ビクリと体を跳ねさせ、驚いた美桜が変な返事を返すと、そこに立っていた正悟も美桜の反応に驚いたのか固まっていた。

「せせせっ……先生何ですか?」

 バクバクと動く心臓を落ち着かせるため、深呼吸を繰り返していると、正悟の口角がフッと上がった。

 あっ……。

 笑った……。

 長い前髪と眼鏡のせいで表情は分かりにくいが口角が上がったということは、笑っているのだろう。そんな正悟の顔を美桜はマジマジと見つめた。すると正悟がその視線から逃れるように目を逸らし、何処かへ行ってしまった。