*::*


 外は冷たい風が吹き、葉の落ちた寂しげな木の枝が、静かに揺れている。そんな中を行き来する人々はコートの襟を立て、小走りに走って行く。しかし、それとは対照的に病院の中は一定の温度に保たれており、今が冬だと言うことを忘れてしまうほどの快適さだった。

 外はあんなに寒そうなのに、と思いながら美桜が歩いていると、そんな外の風景を少し大人びた少女が、渡り廊下の窓から外を眺めていた。病衣を着ていることから患者だと言うことはわかるが、美桜の働く心臓外科の子供達とは雰囲気がぜんぜん違う。美桜がふと視線を落とすと、少女の左の手首に包帯が巻かれていることに気がついた。

 この子は多分……朝、同期の咲恵(さえ)が言っていた患者さんかな?確か、自殺未遂で昨日運ばれてきた子がいて大変だったと話していた。