その時、ナースステーションに異常を知らせるモニターのアラーム音が響き渡った。

 今日は何事も無く仕事が終わると思っていた美桜は、脳内を帰ることから、仕事モードに切り替える。夜勤三人の中で一番長くこの病院で働く美桜は、同僚の看護師に指示を出した。

「雨宮さんドクターに急変の連絡して、その後家族に連絡もお願い。福田さんは救急カートを持って病室へ急いで。私は先に病室に行くから」

「「はい!」」

 美桜は二人の返事を聞くと、アラームの示す病室へと走り出し、個室の扉をノックすること無く中へ飛び込んだ。中に入り最初にすることは、患者さんの状態確認だ。

「大島さん大丈夫ですか?」

 大きな声で声をかけてみるが反応が無い。強めに肩を叩き、もう一度大きな声で声をかける。

「大島さん大丈夫ですか?聞こえますか?」

 やはり反応は無い。かろうじて呼吸はしているものの、苦しそうに肩を揺らし、なんとか肺に酸素を送ろうとしている様子がうかがえる。ベッドの横に設置されているモニターには血圧70/34㎜Hg、脈32回、呼吸6回、SPO²64%を表示していた。(SPO²とは動脈血酸素飽和度、動脈に含まれる酸素濃度のことを言います)

 血圧の正常値は最高血圧が140未満、最低血圧が90未満、脈拍の正常は60~100回、呼吸回数の正常は12~20回、SPO²の正常値は96~99%。

 大島さんの数値は明らかに異常を示していた。