子供達の元気な声が談話室に響き渡ると、学生組が何事かと顔を出した。

「何?どうしたの?外に行くの?」

「外に行って良いの?」

「うん。先生からの許可は取ったから、学生組も息抜きに行こう」

「「「行く!」」」

 美桜の言葉に、学生組もうれしそうな笑顔を見せた。

「じゃあ、寒くないように上着を着てきて」

 自分の病室にうれしそうに上衣を摂りに行った子供達を見つめ、美桜が笑っていると、誰かに白衣の裾を引っ張られていることに気づいた。美桜は引っ張られている裾に視線を向ける。

「ん?紬(つむぎ)ちゃんどうしたの?」

「あの……美桜おねえちゃん、唯人くんは外に行ける?」

 紬が眉をひそめながら聞いてきた。木下紬(きのしたつむぎ)10歳は、色素の薄い柔らかそうなストレートの髪を肩で切りそろえ、子供の特徴とも言える、ふっくらとした頬に、二重の可愛らしい瞳をしている。そんな可愛らしい瞳が今は悲しそうに潤んでいた。

 紬ちゃんは唯人くんと同じ拡張型心筋症で、同じ病気のためか紬ちゃんはいつも唯人くんにくっついている。まるで兄弟の様にいつも一緒にいて、その姿をいつも微笑ましく思っていた。

「ごめんね紬ちゃん。残念だけど、今日は唯人くんは外に出られないよ」

「…………」

 紬は何も言わずに俯いた。

 唯人くんの状態を考えると外に出るのは難しい。紬ちゃんの気持ちもわかるが、こればかりはどうすることも出来なかった。

「紬ちゃん。唯人くんの分もいっぱい遊ぼう。そして外の様子を唯人くんに話してあげよう。あっ、そうだ。写真とかも撮って見せてあげよう」

 美桜の提案に俯いていた紬が顔を上げた。

「うん。いっぱい写真撮る」