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 次の日の朝。

 もうすぐ朝の申し送りが始まろうとしていたのだが、その準備の最中に福田がやって来た。

「美桜さん聞きましたよ~。昨日、今日から務める先生にお姫様抱っこしてもらったって~。見たかったな。美桜さんがお姫様抱っこされてるところ」

 二ヒヒッと、こちらをからかうように笑う福田。

「ちょっとそれ何処情報よ」

「え?みんな知ってますよ」

 周りを見れば、みんながこちらをチラチラと気にしているのがわかる。病院は女性率が高い。そのため面白い噂話なんかは、あっという間に広がってしまう。今や私が樋熊先生にお姫様抱っこされたことは、病院中の人々が知る話なのだろう。

 この事件は、私の黒歴史となることは必須。

 ひゅるる~と、私の回りにだけ冷たい風が吹き、チーンっと、魂が抜けたとき、談話室の方から泣き声と悲鳴が聞こえてきた。