「キャーー!!人が倒れた。誰か!」

 美桜と正悟は声のした方に視線を向けると、改札口のすぐ横で男性が倒れていた。

 美桜と正悟は男性に駆け寄ると、すぐに状態を観察しながら美桜が声を掛けた。

「大丈夫ですか?名前が言えますか?」

 美桜の声がけに反応しない男性。

 美桜はすぐに男性の手首にある橈骨動脈に触れ、脈を取るが、本来指に触れるはずの脈が感じられない。

「正悟さん、橈骨動脈触れません」

 正悟も首にある頸動脈に触れるが、そこも脈が触れることが無かった。

「美桜、心停止だ。心マ開始するぞ」

「はい!」

 正悟は男性の胸に両手を乗せると、肘を曲げないように注意し、全体重を掛け胸骨圧迫を開始する。そこへ、騒ぎを聞きつけた駅員が三人駆けつけた。

「何かありましたか?」

 美桜は心臓マッサージを続けている正悟の代わりに、駅員に状況を説明した。

「男性が心停止で倒れました。すぐに救急車を読んで下さい。AEDがあったら持ってきて下さい。それから救急車が来たら誘導をお願いします。できたらパーテーションの様な物があると助かります」

 美桜の的確な指示に駅員が走り出す。

 すぐにAEDを持った駅員が戻って来た。

「AEDです。他に用意する物はありますか?パーテーションはすぐに届きます」

「大丈夫です。でも、野次馬が集まり始めているので、注意と誘導をお願いします。それから、救急隊が到着したら通行の妨げにならないようにお願いします」

「わかりました」

 そこにパーテーションが届いた。

「これはどうしたら?」

「私達を囲うように配置して下さい」

 すると駅員が私達の邪魔にならないよう、注意しながらパーテーションを配置してくれた。