*番外編2*


 これは美桜と正悟の子供達が産まれる前の話。

 正悟からのプロポーズを受け入れた美桜は本日、正悟の実家へと挨拶へと行く予定となっていた。仕事中はいつも一纏めにしている髪を下ろし、清楚に見えるようハーフアップした。服装も髪型に合うように控えめな、小さな花柄の白いワンピースを選んだ。

 緊張する……。

 美桜は胸に手を当て、深呼吸を繰り返した。手のひらに人という字を書いて飲み込んでみるも、なんの効果も見られない。

 まあ、そんなものよね。

 肺いっぱいに酸素を取り込み、一気に吐き出した。

 正悟の両親に会うのはもちろん初めてのことで、心臓が忙しなく動く。さくらさんと正悟さんの御両親はどんな人なんだろう。

 そんな事を考えていると、いつの間にか指定された駅に到着した。手土産に用意した羊羹を手に駅の改札を抜けると、そこに正悟が立っていた。いつもの無精ひげは綺麗に剃られ、ヨレヨレのスエットでは無くジャケットを着た正悟は、どこぞのモデルにも負けないほどの格好良さがあった。それを女性達が見逃すはずが無い。


「お兄さん、格好いいですね。一緒に遊びに行きましょうよ」

「今暇ですか?一緒にご飯でもどうですか?」

「連絡先の交換しましょうよ」

 綺麗に着飾ったスラリとした美人さん達が、正悟にしな垂れるようにして話しかけている。それを正悟が無表情で対応していた。

「待ち合わせをしている」

 相変わらず、表情筋死んでるなぁと美桜は思う。前に福田が自分だけにデレる彼氏が羨ましいと言われたことがあった。それから正悟を観察してみたが、確かに正悟さんは私の前以外では笑わない。それを優越感に思っていた。今も、あんな美人に迫られても、なびく様子が無い。