産婦人科に到着すると三人目ということで、すぐに分娩室へと移動させられた。その頃には陣痛の間隔は5分になっていて、助産師さんから「順調ね」と微笑まれた。

 それから2時間後、分娩室の廊下まで聞こえる大きな赤ちゃんの泣き声が聞こえてきた。

「ンギャー、ンギャー、ンッギャー」

 その声を聞いた正悟と蒼、桜子はハイタッチしながら喜んだ。

 分娩という大仕事を終え、無事に我が子を産み終わったことに、美桜は安堵の溜め息を付く。

 無事に生まれてくれて良かった。

 産後の処置が終わると、三人が分娩室に入ってきた。

 疲れ切った顔で美桜が赤ちゃんを抱きしめていると、正悟が労いの言葉を掛けてくれた。

「美桜、お疲れ様。ありがとう」

 正悟の言葉に心が温かくなる。

「正悟さん……これからがまた、大変ですね」

 そう言って笑うと、正悟も笑った。

 なんて幸せなんだろう。

 それから桜子が、小さな手を握りしめ、こちらに強い意思を宿した瞳を向けてきた。

「わたち、おねえちゃん」

 何を言うのかと思えば……。

 お姉ちゃんになった事がよほどうれしかったらしい。

 桜子の言葉に正悟と美桜は顔を見合わせ、微笑んだ。 


 これから家族5人の生活が始まる。



      
    fin