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 また桜の季節がやって来た。

 ひらひらと舞う桜の木の下で、美桜は顔をほころばせた。正悟と出会って1年以上が過ぎていた。その間、楽しいことばかりだった。幸せな時間を沢山過ごしたが、たまには喧嘩もした。しかし、すぐに正悟さんが謝ってくれるため、大きな喧嘩にはならなかった。

 
 今日は正悟とのデートなのだが、時間になってもやって来ない正悟に美桜は心配になった。

 正悟さんがこんなに遅刻をすることは滅多にないのに……。

「美桜!待たせた。寝坊した」

 走りながらやって来た正悟の頭に寝癖を見つけ、美桜はうれしくなってしまう。

 きっと慌てて来てくれたのだろう。

「正悟さん、連絡くれれば良かったのに、そんなに慌てて事故にでも遭ったら大変ですよ。天才心臓外科の腕を待っている人が沢山いるんだから」

「待っているのは、患者だけか?美桜は?」

「もちろん。私も正悟さんを待ってますよ」

 にっこり笑うと、正悟が日だまりみたいな笑顔を向けてくる。イケメンの笑顔、眼福です。美桜が両手を組み心の中で神に感謝していると、正悟がその手を取った。