愕然とした美桜に、男が声を掛けてきた。

「おい。何をしている?とりあえず処置室へ行くぞ」

 え……。

 男は美桜と共にストレッチャーを押すと、処置室へと向かった。その間、男は未来の右手首に手を添え、脈を診ると顔をしかめた。

「チッ……不整脈……この子の病名は?」

「エプスタイン症です」

 思わず答えてしまった美桜は「ハッ」っとした。個人情報を他人に話してしまうなんて、看護師失格だ。サッと血の気が引いていくのを感じたが、今はそれどころでは無い。反省は後でいくらでも出来る。

 処置室へと着くと美桜は急いでバイタルを測定し、未来の胸にモニター用のシールを三枚貼り付け、赤、黄、緑の電極をつなげていく。すると、モニターに波形が表示された。

「おい。心エコーは何処にある?」

「ここにありますけど?」

 男は美桜の指の先に視線を向けると、エコーの準備を始めた。

 この人は何をしようとしているの?