ここは心臓に疾患のある患者が集まってくる、総合心臓血管センター病院。……と、言っても心臓の病気だけでなはく、内科、外科、整形外科、神経内科、リハビリ科と沢山の科があり、心臓外科がメインではあるのだが、色々な病気の患者さんがやって来る。そのため日中のこの病院は、外来の患者さんやお見舞いにやって来た家族など沢山の人で溢れかえる。

 そんな総合心臓血管センター病院のナースステーションで、現在夜勤をしているナースが三人……。その一人である坂口美桜(さかぐちみおう)は、夜間の病院という独特な雰囲気の中、仕事を行っていた。夜の病院は小さな音でも、大きな音のように響き、病院独特な消毒の匂いが不気味さを誘う。人が亡くなることもある病院の夜勤は、なれるまで背筋がゾクゾクしてしまうものだ。しかし、美桜はなれた様子で巡視をこなし席に着いた。

 坂口美桜、26歳。看護師として新人でもベテランでも無い、中途半端な時期とでも言うのだろうか……そんな時期を過ごしている私は、背中まである黒い髪を看護業務の邪魔にならない様、お団子状にひとまとめにしている。そして26歳とは思えない148センチの小さな身長と、クリッとした大きな瞳の童顔のせいで、回りから子供扱いされることが多い。しかし美桜は元がしっかり者のため、皆からの信頼があつく、頼りにされることが多かった。そんな美桜は現在夜勤の最中なのだが、巡視と記録以外の仕事が終わり、一息を就いているところで、首から提げた看護師の名札の裏に入れたカードを見つめていた。