そのやりとりを見て、ほんの少しだけホッとしてしまった。
そんな自分を見つけて、性格が悪いのかも、と反省する。
「いいじゃん、1枚くらいあげても。いつも同じの噛んでるんだから、まだあるんだろう?」
男子は女子を気にしているのか、西原くんを小突く。
「んー、好きな味だから、オレひとりが独占したいっつーの?」
西原くんはニイッと笑って、こう続けた。
「好きな人の好きなところ、自分だけが知っていたい的な?」
その言葉に、むくれていた女子が噴き出して、
「何、その独占欲。ウケるし。そんなに大事なんだ?そのガム」
と、笑う。
ぴりっとした空気が和やかになった。
西原くんを中心に、みんな笑っている。
(すごいなぁ)
西原くんはいつだって輪の中心で笑っている。
「自分」をきちんと持っていて、曲げない。
でも周りの人を笑顔にする力がある。