頭が痛くて少し休もうと思い、保健室に来た。ドアを開けると先生がいなくて、学校で有名な赤西先輩がいた。私が入学したすぐの頃、廊下を歩いていたら先輩と肩がぶつかり、見た目が不良っぽくて、怖くて、謝ると私はすぐに逃げた。あれからすれ違うたびに睨まれている気がする。勘違いかもしれなくて、直接何かされたわけではないけれど。

「どうしたの?」
「頭が痛くて、少し休んでいこうかと」
「大丈夫?」
「あ、はい……」

 会話は成立しているけれども、怖くて私の心は震えていた。

 その時だった。
「なおれー、なおれー……」
 そう言いながら彼は、私の頭をぽんぽんしてきた。
 えっ? 何? いきなり。しかもとびきりの優しい表情。私の鼓動が早くなった。一瞬彼と目があってしまい、思い切り恥ずかしくなって、うつむいた。そして昔、同じ事をされた記憶が……。