「チカを探してきます」
「おう、気を付けてな!」

 食堂の扉を開けると広場が見える。たくさんのランプが下げられて、淡く光っている。昼間にはなかった屋台らしきものが中央に並んでいる。

 昼間よりももっと活気があるのに驚きながら進んでいくと、妹の声が聴こえた。

「チカ!」
「おにいちゃん!」

 みてみてと笑うチカが持っているのは、猫の形をした木彫りのお守りだった。ハヤトが近づくと、かわいいよねぇと満足そうに笑う。

「お嬢ちゃんのお兄さん? とても可愛らしい妹さんね」
「ありがとうございます」

 ふくふくとして毛足の長い猫人が、温かい笑顔をこちらに向ける。それに会釈してチカを引き寄せると、耳元でささやいた。

「お前、アレは?」
「あれ? やどのおじさんがおいていってって」

 確かに、あれを持っていては動きにくいのは確かだ。ここに来てからずっと降ろすことのなかった荷を下ろして楽しそうな妹に、ふっと息を吐いた。