指先から溢れるほどの愛を


「あのっ、おいくらですか⁉︎」

「まだオープンしてない店だし、いらない」

「こんなに良くしてもらったのにそういう訳には!」

「そういうつもりでやったんじゃないから」

「でもそれじゃあ私の気が済みません!」


それでもお財布からお札を抜き出そうとしている頑固な私をやれやれ、とでも言うように見つめて彼は言った。


「んー、じゃあこうしよう。紬出版が本命だって言ってたよな?無事内定が取れたらさ、また店に来てよ。んであんたの髪、今度はゆっくりオレに弄らせて?それでチャラってことで」

「……もし、内定が取れなかったら?」

「礼はいらない。でもあんたはオレに礼がしたいんだろ?だったら意地でも内定勝ち取って来い」

「何ですかそれ……!」

「大丈夫。だってあんた今日ツイてるから。はい、これ名刺ね。頑張って。あ、内定取れなかったら来るなよ?ちなみに名前は?」

「……相原、美湖、です……」