「………じゃあ、遠慮なく」
恥ずかしくて振り向くことも顔を上げることも出来ずにいれば、どきりとするセリフと共に突然ふ、と拘束が解けた。
代わりに今度はふわっとした浮遊感に襲われる。
「………うわっ⁉︎」
何と、私はあっという間に坂崎さんに横抱きにされていた。
咄嗟に首にしがみついた私を妖艶な笑みで見下ろして、彼は軽々と私を抱えたままリビングを出る。
そしてそっと降ろされたのは、リビング同様モノトーンで統一されたシックな寝室の広いベッドの上。
2人分の重さにベッドのスプリングが僅かに軋んだ。
サイドテーブルのシンプルなランプの薄明かりが、私の上に覆い被さる坂崎さんの顔を淡く照らし出す。
両の手首はシーツに縫い止められ、熱を帯びた三白眼も私を捉えて離さない。
ヤバイ………。胸がドキドキし過ぎて苦しい………。
「あっあのっ、坂崎さ………っ、ん……っ!」
緊張できゅっ、としまる喉から何とか絞り出した声は、啄むようなキスによって飲み込まれた。
「触って、いい?」
うっ………!この状況でそんな色気たっぷりの顔で確認しないで………っ!
その熱っぽい視線に、私の心臓はさらに暴れ狂う。
でもその問いかけに頷く前に、私は坂崎さんにどうしても言っておきたいことがある。
例えこのムードを壊してしまったとしても………。



