指先から溢れるほどの愛を

しかも食事代は坂崎さんが実にスマートに払ってくれて、そりゃあモテるわ……と、恐縮しながらもそのポテンシャルの高さに脱帽した。


ふぅ……。


お互い食事を終えた後、トイレに立った坂崎さんをミルクティーを飲みながら待つ。

こうしてると本当のデートみたいだと錯覚しそうになる。そんなんじゃないのに。


「相原?」


すると、不意に名前を呼ばれて歩道の方へ視線を向ける。


「……えっ、藤川さんじゃないですか!お疲れ様です!」


何とそこにいたのは藤川さんで、驚きのあまり思わず立ち上がって挨拶してしまった。

身体に染み付いた条件反射。まさか休みの日にこんな所で会うとは。


「くくっ、仕事じゃないんだからそんな畏まらなくていいし。なに、相原はサンドイッチ食いに来たの?」


仕事の時は割と強面の藤川さんが、僅かに柔らかく表情を崩した。


「はい。藤川さんもですか?」

「いや。ここ、近所」

「あ、近所……」
  


普段あまり見られない非常にレアなその表情を見ながら、そういえば前にこの辺りに住んでるって聞いたことがあるような気がするな、と思い出す。


「一人……じゃなさそうだな。……なに、デート、とか?」


テーブルの上に置かれた二人分のトレイを見て私に連れがいることを察したらしい藤川さんが、伺うように私の瞳を見据えて問う。