指先から溢れるほどの愛を

でも恋愛より仕事に重きを置くタイプだった私は、彼の恋愛に対する熱量についていけなくて結局二ヶ月弱でお別れした。

つまりは価値観の違いというやつだ。

それ以来さらに仕事に邁進して来て今に至る。


兎にも角にも、友達という明確なポジションが確立されたのならもう距離感に悩む必要はない。


「はいはい、それはどうもありがとうございます!でも坂崎さん、こういうシチュエーションでそういうセリフは言う相手ちゃんと考えた方がいいですよ?勘違いされてそれこそ後々面倒くさいことになりかねませんから」

「……ちゃんと考えて言ってんだけど?」

「ならいいですけど」

「……本当ミーコは……」


その時ラジオから流れてきた数年前に流行った春ソング。


「あっ、この曲懐かしくないですか⁉︎私あの当時よく友達とカラオケで歌ってましたよ!」


食い付いた私の声にかき消されて、ハンドルを握っていない方の手で口元を覆い呟かれた彼のセリフは、私には聞こえて来なかったのだった。