「えっ、車⁉︎」


Mrs.サンドは紬出版と坂崎さんのお店のある最寄駅から二駅先にある。だからてっきり電車で行くと思っていたのに。


「次の現場で使う商売道具積んでるから、車で行く」

「……あ、なるほど」


この前の坂崎さんもそうだったけれど、ヘアメイクさんは大抵大きなスーツケースやキャリーバッグにたくさんの商売道具を詰め込んいて、いつどんな時でも臨機応変に対応出来るように備えている。

ランチの後現場に行くのだから、その荷物を抱えての移動はそりゃあ車の方が楽だろう。

そう頭では納得しながらも、まさか坂崎さんの運転する車に乗ることになるなんて心の準備が出来ていないから、固まってしまう。


「時間なくなるよ、ほら」


そんな私を、坂崎さんはぐいっと遠慮なく車に押し込んだ。



ーー男の人の運転する姿って、どうしてこんなに格好良く見えるんだろう。それが好きな人なら尚更だ。

右手でハンドルを握り、左腕はコンソールボックスに預けているその気怠げな運転スタイルも、ハンドルを握る、少し腕まくりをした袖から覗く綺麗に筋肉のついた筋張った腕も、さっきから色気が半端ない。

前を見ているふりをしてついチラチラと横目で盗み見てしまう。