指先から溢れるほどの愛を


「いてーよ悟(サトル)。つーか麻美(アサミ)、離してやって?ミーコが窒息する」


子犬みたいな可愛いらしい顔立ちをした悟さんにグリグリされて顔を顰めながらも、坂崎さんは私を抱きしめている女性スタッフ、麻美さんに言う。


「あらやだ、ごめんなさいね!何かもう可愛くてついっ」

「ぷはっ」


窒息、というのはあながち大袈裟でもない。

なぜなら私を解放してくれた麻美さんは、私よりも確実に10センチ以上は高いであろう身長にとてもグラマラスな体型でセクシーな色香を纏った美女。抱きしめられた私は完全に彼女の豊満なバストに顔を埋める形になっていたのだ。


「ほらミーコ、コートとバッグこっちに寄越しな」

「あ、そうだ、これ!この前のお礼も兼ねて、良かったら皆さんで召し上がって下さい。改めて、あの時は本当にありがとうございました」


名刺の件と麻美さんのハグですっかり渡すタイミングを逃していた心ばかりのお礼の品を、コートとバッグを渡す前に坂崎さんに差し出した。

ダークブラウンの紙袋に入ったそれは、私の大好きなチョコレートメーカー、ラピスのチョコレート。

カラフルなフィルムでキャンディ包みされた小ぶりなチョコの詰め合せは、このメーカーのチョコの中では差し入れに最適な量と値段なのだ。