指先から溢れるほどの愛を

名刺の裏?

あの時貰った名刺は表側を上にしてお財布のカード入れに入れていた。予約を取る時も、裏があるとは思わなかったから特に見ていなかったのだけど。

そう思い改めてお財布から名刺を取り出して裏をめくってみれば、そこにはトークアプリのIDらしきものとケータイの番号が書かれていた。


「あ」

「そこに連絡くれればいつでも予約調整したのに」

「……坂崎さんって、いっつもこういうことしてるんですか?」


名刺の裏を坂崎さんの方へ向けてじとりと見やる。


「まさか。まぁ正直に言えばオレの美容師人生で2度目、かな。つーかなに、オレってそんなチャラく見えてんの?」

「はい、物凄く」

「「ぶっ……!」」


ぴしゃりと言い切った私に、奥にいた2人のスタッフが同時に吹き出して大爆笑した。


「おい、てめぇら……」

「竜さんダメじゃないっすか!まだ2回目なのにもうチャラい認定されてますよ!」

「やだぁ!何この子、超面白いっ。気に入っちゃったわ!今日は私が特別にネイルもしてあげちゃう!」


坂崎さんはいつの間にか近寄って来ていた男性スタッフに肘で脇腹をグリグリされ、私は奥からツカツカと歩いて来た女性スタッフに、気付けばむぎゅっと抱きしめられていた。

なっ、何なに⁉︎