大輔が曲がり角を曲がったとき不意に足を止めた。


佳奈は大輔の背中にぶつかってしまいそうになり、慌ててブレーキをかける。


そして前方へ視線を向けた時、中学生くらいの少女が地蔵に襲われている姿が目に入ったのだ。


地蔵は少女の首を後方からつかみ、片手でその体を持ち上げている。


少女は必死に足をばたつかせて抵抗しているけれど、地蔵はビクともしない。


後ろから首を掴まれているため呼吸もままならず、顔が青くなってきている。


佳奈は咄嗟に地蔵の顔に注視した。


見たことのない男の顔だ。


智子たちの仲間の1人であることに間違いはなかった。


そう理解した瞬間ホッとしている自分がいた。


少なくとも今は慎也の首を跳ねるようなことはしなくてもいいのだと、反射的に考えてしまったのだ。


佳奈は強く左右に首を振って自分の考えをかき消した。


早かれ遅かれ、深夜の首を取ることは決まっているのだ。


そうしないとこの悪夢は終わらない。


慎也が戻ってこないのだから。