首取り様4

街の方から悲鳴と怒号が聞こえてきていて、こんなことをしている場合じゃないことは十分に理解していた。


けれど、もう今しかないのかもしれないと佳奈は感じていたのだ。


こうして春香と肩を並べて会話できるのは、もう今しかない。


刀が見つかれば今度は地蔵の首を取りに行くことになる。


それが成功する保証なんてどこにもなかった。


自分たちはもうすぐ死ぬ運命になるのかもしれない。


「でも、こうしてずっと春香と一緒にいることができてよかったと思ってる」


佳奈は心の底からそう言った。


そして春香の手を握りしめる。


真夏だというのに、すごく冷たい手をしていた。


「私も、佳奈と一緒にいられてよかった。できれば、美樹も一緒が良かったけど」


佳奈は頷く。


いつまでも3人でバカみたいに騒いで、時には悩んだりしていたかった。


ずっとずっと、最高の3人でいたかった。


佳奈の脳裏には地蔵になり明宏の放った弾丸に倒れ込んだ美樹の姿があった。


思い出すと涙が出そうになり、すぐに気が付かれないように手の甲でぬぐった。