「え?」


明宏が目を見開いて佳奈を見つめる。


佳奈の視線は赤ん坊に釘付けになっていた。


「これは私達の問題でもあるんだから、私達だけで解決してもいいはずだよね?」


「本気で言ってんのかよ」


大輔が佳奈をにらみつける。


けれど佳奈は考えを変えなかった。


「私と春香も銃を持つ。それでいいでしょう?」


突然名前を出された春香は戸惑っていたけれど、拒否はしなかった。


グッと唇を引き結んで泣きそうな顔になりながら頷く。


「本気なんだな?」


大輔に聞かれて佳奈は大きく頷いた。


自分がどれだけ無謀なことを言っているのか理解しているつもりだ。


もしかしたら三福寺に到着する前に全員死んでしまうかもしれない。


街の壊滅を阻止する所か、慎也たちを助けることすらできないかもしれない。


それでも、母親の腕の中でスヤスヤと眠っている赤ん坊から、父親を奪うようなことはできなかった。


佳奈の強い意思を感じ取り、大輔が明宏へ向けて頷いてみせた。