まるで、ここから一歩も動かないぞと硬い決意を持っているかのように。


「本間さんはここに残るといい。小さな子どももいるんだ。死ぬわけにはいかない」


柏木がそう言うと、本間は目を見開いて「それはダメだ」と否定した。


「この子たちが巻き込まれたのは一生のせいでもあるんだからな」


本間は佳奈たちへ視線を向けて言った。


自分の先祖と子供が絡んでいることを、手放しで見ていることなんてできなかった。


ここにいる大人たちはみんな、どんなことでも手伝うつもりだった。


しかし気がつけば廊下に自分たちの妻が集まってきていたのだ。


中にはまだ生まれたばかりの赤ん坊を抱っこしている人もいる。


その光景を見た瞬間佳奈の胸がチクリと傷んだ。


自分たちの大切な人を救うために、赤ん坊の父親は死んでしまうかもしれない。


そう考えると胸がじくじくと傷んできて、止めることができなかった。


「私達だけで行こうよ」


気がつくと佳奈はそうつぶやいていた。