首取り様4

あぁ……。


これは慎也じゃないんだ。


佳奈はその目を見た時にそう感じた。


慎也によく似た顔をしている別人だ。


佳奈は無意識のうちに一歩足を前に踏み出していた。


両手で刀を握りしめて、一気に駆け出す。


後ろから大輔と明宏がなにか叫んだけれど、耳には届かなかった。


きっと自分を引き止めたのだろう。


無謀なことはするなと叫んだのだろう。


それでも佳奈の足は止まらなかった。


立ち尽くしている慎也と距離を詰めると、慎也が両手をこちらへ伸ばしてきた。


刀を振り上げる。


その瞬間刀の重さに負けて佳奈の重心がブレた。


あっと目を見開いたときにはすでに体のバランスが崩れていた。


それが幸いして身を屈めることになり、慎也の両腕から逃れたが刀は手から滑り落ちてしまった。