「えぇ。でも大通りでは見ました。灰色の人間は他の人たちを襲っていて、そのすきに学校へ逃げ込んできたんです」


少女の話しによるとこの夫婦はこの中学校の教員で鍵を持っていた。


だからこうして逃げ込むことができたんだろう。


「ありがとうございます。もう少しこの辺りを探してみます」


きっと地蔵はすでに場所を変えているだろうけれど、佳奈はそう言った。


「入り口の鍵はどうして掛けないんですか?」


さり際に明宏が気になっていたことを質問した。


鍵をかけていたも化け物は窓を割って侵入する。


それでも人間の心理的には鍵をかけたくなる状況のはずだった。


「それは……誰でもここに逃げ込めるようにしたかったからです」


女性の言葉に明宏は一瞬目を見開いた。


自分たちが襲われるかもしれない状況で、鍵をかけない選択をしたのは他の人たちのためだったのだ。