女性があそこにいたら刀を振り下ろすことができない。


部屋は狭く、地蔵と女性の距離があまりにも近すぎた。


刀を両手で握りしめている大輔もそれを懸念しているようで、なかなか動くことができずにいる。


佳奈と春香は一瞬目を見交わせた。


まずはあの女性を安全なところへ避難させないといけない。


「こっちへ!」


佳奈が叫んだ。


女性がハッとしたように顔を上げる。


その顔は真っ青でまるで生気がない。


それでも佳奈の声に反応してどうにか立ち上がろうとする。


地蔵が女性へ向けて振り返る寸前、明宏が猟銃を天井へ向けて放った。


爆音と同時に地蔵の動きが止まる。


そのすきに佳奈は女性の元へかけより、助け起こした。


そのままの勢いで春香と共に隣の部屋へと移動した。


「あ、ありがとう……」