明宏は思わずつぶやいた。


さっき殺されていた男性を見た限りでは黒い化け物の仕業だと思っていたから、猟銃を構えていたのだ。


しかし、こちらを背にして立っているのは地蔵だった。


そして右手には包丁を握りしめている。


その地蔵は明宏の声に反応してゆっくりと体を反転させた。


そして顔をこちらへ向ける。


その顔には見覚えがあって、佳奈は思わず息を飲んだ。


一生だ!


背が高くて体格の良かった一生は、今は身長165センチくらいになっている。


その代わり体は地蔵の石と同じほど強固だ。


一生が握りしめている包丁は血に濡れていて、それでさっきの男性を刺殺したのだということが安易に想像できた。


どうしてこの地蔵だけ武器を持っているんだろう?


疑問を感じていたが、それを質問しても返ってくることはないとわかっていた。


佳奈と春香はうずくまっている女性へ視線を向けた。