撃退する武器も持っているし、解決方法だって知っている。


だけどこの死んでいった沢山の人たちはそうじゃないのだ。


突然動き出した地蔵たち、それに見たこともない黒い化け物に容赦なく殺されていく。


なにもわからないまま、ただ巻き込まれていく。


そう思うとたまらない気持ちになった。


「佳奈、行くぞ」


男性がすでに手遅れだと気がつくと大輔が声をかけてきた。


佳奈は全身の力が抜けてしまったかのようにヨロヨロと立ち上がる。


そして4人で家の奥へと進んだ。


リビングはキッチンとの続きになっていて、そこは泥棒にでも入られたかのように散らかっていた。


きっと、住民が必死に逃げた痕跡だ。


その痕跡をたどって隣の部屋に入ると、灰色の人間が見えた。


その奥にふるえている女性がうずくまっている。


「地蔵?」