その年を持って雨乞いのイケニエ自体が廃止され、お祭りだけが長く残っていたらしい。


そのお祭りも三福寺を守る人がいなくなってからはなくなってしまったようだ。


「どうしてこの5人が最後になったの?」


佳奈の言葉に大輔が「さぁ? さすがにおかしいことに気がついたんじゃねぇの?」と、返す。


その横で明宏が印刷した資料をしっかりと読み込んでいた。


「そうじゃない。この年のイケニエは今までとは違ったみたいだ」


その年は雨乞いのイケニエが始まってからちょうど10年目だった。


長いあいだこの儀式があったことで、街は水不足に悩まされることがなくなったのだと考えられていた。


そのため、10年の節目になったこの年は、今までよりも更に豪華なイケニエを準備することに決めたのだそうだ。


「でもイケニエは占いで決めるんだよね?」


昼間見た資料の中にはそう書かれていたことを佳奈は思いだしていた。


「うん。だからそもそもの占い自体を変化させたって書いてある。今まではイケニエに選ぶ人間は30歳以上だったけれど、この年は年齢制限を撤廃したんだ」


明治時代で30代というと高齢の部類に入るかも知れない。


「この年に生まれた赤ん坊までが占いの中に入れられることになった。そして選ばれた5人は……5、6歳の子供たちばかりだった」