季節外れのエチュードを

目線を下ろせば、私の描いた絵が視界に入った。

苦しい、苦しいと思いながら何日もかけて描いた絵。


楽しい気持ちで描いた前の絵の方が断然上手く見える。



それなのに……綺麗?



お世辞を言わない松浦くんがそんなこと言うなんて、なんだか信じられなかった。


それに、私の気持ちが伝わってくるっていったい……



「……どうして?」



小さくて今にもかき消えてしまいそうな声だった。


でも松浦くんには聞こえていたようで、静かに言葉を続ける。



「お前の絵は感情が伝わりやすいんだよ」


「……え?どういうこと?」


「なんつーか、どういう感情で描いたのかわかりやすい。それに絵を見たときに物語を感じやすい」



いつものトゲトゲした口調で話す松浦くん。

でもだからこそ、これは嘘でもお世辞でもないんだってわかる。


モヤモヤした頭の中で、なにかが小さく光った。



「そういうのはお前の強みだよな。俺は素直に羨ましいよ」


「……私の、強み……」



私の描く絵に長所ってあったんだ……

松浦くんも羨む、そんな長所。


自分ではそんな風に感じたことなんてなかった。

もしかしたら松浦くんはそう感じるだけで、他の人はそうじゃないかもしれない。


でも……