季節外れのエチュードを

自分の部屋に戻ると、涙が勝手にぽたぽたとあふれ出てきた。


泣いてる、自分でそう気づいたときには声をおさえることに必死だった。


苦しい、悲しい、辛い、悔しい。

たくさんの負の感情が私の心の中で暴れまわる。



私、どうしてこんなにショック受けてるんだろう。


自分の絵が下手なことくらい自分がいちばんよくわかってる。


松浦くんよりも、部員のみんなよりも、それにともちゃんよりも。


私はイラストレーターを目指してるわけじゃない。


絵を描くことを仕事にしたくて頑張ってるんじゃない。


部活の範囲、言ってしまえば趣味みたいなもの。

将来、絵でご飯を食べていくことは無理。


目指してないんだから否定されたってなんでもないはずなのに。



『美波は絵を描くことに向いてないわ。あの子の絵、どこかぱっとしないもの』



……ううん、違う。

下手でも、才能がなくても、向いてなくても、今私が必死に頑張っていることに変わりはないから。


頑張ってるって気づいてくれたから。

大好きな貴方だから。

応援してほしかった。

否定じゃなく批判してほしかった。


私が好きなことを、そういう風に言ってほしくはなかった。