どんどん寒さが本格的になってきた十一月。

私は今日も部室で一枚の絵と向き合っていた。


絵を描くことが得意だとはまだまだ言えないけれど、精一杯心を込めて。



「また海の絵かよ、見てて寒くなるわ」



突然後ろからそんな声が聞こえて驚く。

振り向くと松浦くんが私の後ろをすすっと通り過ぎて行った。



「もう、うるさいなあ。文句言うくらいならどこをなおしたらいいか教えてよ」


「やなこった」



彼は飄々とした態度でそう言うといつもの席に座る。


松浦くんとふたりで残った日から約5か月たち、今ではこうして軽口を叩き合える仲になった。


仲良くなれたのは素直に嬉しい。


あのときに抱いていた疑問も全部聞くことができた。


だけど彼は、私の絵のなおすべきところについてはいつも教えてくれない。


一体どうしてなんだろう。

私以外の人が聞いたら素直に嘘偽りなく教えてくれるのに。


……あれかな、ダメなところがいっぱいすぎて言うのもめんどくさい、みたいな感じかな。


わー、そうだったらちょっとへこむなあ……

いやいや、それならなおさらもっと頑張らないと!


よし、と意気込むと横からさらりと部長がやって来た。