季節外れのエチュードを

「……俺の絵を否定してきたじいちゃんに。あとは顔だけで近寄ってくるクラスの女子とか、俺の努力を知らないくせに安くで買おうとしてくるやつとか」



……否定。

あんなに上手い松浦くんでも誰かに否定されたりするんだ。


それにやっぱりクラスの女子、苦手だったんだな……



「……そっか。私も何も知らないのに、あのときはいきなりごめんね」



ほんとはずっと伝えたかった言葉。

松浦くんは私と目が合うと少し俯いた。



「……いや、お前は褒めてくれただけだろ。あのときは俺もお前のこと何も知らないのに勝手に決めつけてた。また変な女子に付きまとわれるって。でもお前は、俺じゃなくて俺の絵を褒めてくれた。すぐに辞めるかと思ったけど意外と根性があるやつで、部活にちゃんと参加するし、努力もしてるってわかっ……」


「……え?」



驚いた。

彼の言葉が途中で途切れたのは気になるけど、松浦くんが私を見ていてくれたことにびっくりした。


そんな風に思ってくれてたなんて思わなくて。



「……最悪。しゃべりすぎた。忘れろ、もう帰る」

「えっ、えっ!?ま、待って、私も帰るよ!」



突然立ち上がって下校の準備をする彼を追いかけるように私も立ち上がる。


ああでも、さすがにふたりで帰るのは気まずいよね。

鍵は私が閉めたらいっか。