「義母の葬儀の後 何となく 気が抜けちゃって。自分では いつもと同じに していたつもりだったけど。政之さんは 私の変化に 気付いていたのね。
『色々 大変だったから 疲れただろう。』って。

『そうね。政之さんも。寂しくなるわね。』政之さんは 実の親を 亡くしたんだから。私よりも 悲しみは 深いじゃない。

『そうだね。でも 親を見送るのは 子供の役目だから 仕方ないよ。悦子は 倒れてから ずっと看病だったから。俺より 大変だったろう。』

『看病って言っても お祖母さんは 眠ったままだったし。全部 病院でしてくれたから。私は ただ お見舞いに 行っていただけだもの。』

『いや、それでも あんなに毎日 お祖母さんの側にいてくれて。本当に ありがとう…』

『ううん。政之さんの親だもの。当たり前でしょう。それに私 お祖母さんには 色々 お世話になったし。ずっと一緒にいたんだもの。自分の親以上に。』

『その分 嫌な思いをしたことも あっただろ?』

『フフッ。嫁いだばかりの頃は よく政之さんに 愚痴を聞いてもらったわね。』

『それだけじゃなくて。姉さんのこともあったから。』

『お義姉さん あれで良かったのかしら。』
私は 政之さんの方から お義姉さんのことを 話題にしてくれたから。思い切って 言ってみたの。」



「政之さん 一瞬 戸惑った顔をしてね。
『あれでって?』って 私に 聞き返したわ。

『うん…私 まだお義姉さんに 許してもらえてないみたいだけど。お義姉さん 私を避けるために 実の親のことも 看病できなくて。後悔してないかしら。』

『今更 許すも許さないも ないだろう。大体 悦子のことだって よく知らないのに。』

『ホント、今更 政之さんと 別れるわけにも いかないし。いくら お義姉さんが 私を気に入らなくても。』

『そうだよ。人のこと とやかく言う前に 自分の家族を 大事にした方がいいんだよ、姉さんは。』
私、政之さんの その言葉を聞いて。もしかして お義姉さんは お義兄さんと 上手くいってないのかもしれないって 思ったわ。政之さんは 何かを知っているのかもしれないって。

その頃 千恵ちゃんは 家を出ていたし。お義姉さんは 一人ぼっちなのかなって思ったの。」