「私、そういうことも 全部 政之さんに 言いつけたわ。政之さん 少し 悲しそうな顔して。
『俺と姉さんは 元々 仲が良くなかったからなぁ。』って言っていたわ。
廣澤の義父は お義姉さんよりも 政之さんのことを 可愛がったらしの。小さい頃からずっと。
政之さんは 跡取りだから。義父にとっては 特別な存在だったわけ。それも どうかと思うけどねぇ。自分の子供じゃない?男だろうが、女だろうが 可愛いのは 同じでしょう。
きっと お義姉さんは 小さな頃から 政之さんに 競争意識を持っていたのね。少しでも 廣澤の義父に 気に入られるように 勉強して。義父の勧める人と 結婚して。慣れない外国暮らしにも 耐えて。それなのに 政之さんは どこの馬の骨とも わからない 私なんかとの結婚を 許されて。不公平だって 思ったのね、きっと。」


「政之さんは 私の負担を軽くするように 色々 考えてくれたわ。食事や お風呂の時間を ずらしたり。なるべく お義姉さんと かち合わないようにって。
お義姉さんがいる間、実家に帰るようにって 言ってくれたけど。さすがに それはできないでしょう。政之さんは 仕事しているんだもの。私が 家を空けるのは 違うと思って。政之さん 日曜日には 私と紀之を デパートの屋上に 連れて行ってくれたわ。フフフッ、優しいでしょう…?」


「結局 私 お義姉さんとは 何も話せないままで。お義姉さん達は また 外国に行ってしまったんだけど。お義姉さん達が 帰った途端に 廣澤の義母は それまでと同じように 私に接するの。私 驚いたわ。もう 以前のように 廣澤の義母を 信用することが できなくてねぇ。
お義姉さんが いる間は お義姉さんに ベッタリで。お義姉さんと一緒になって 私を無視していたのよ。それなのに まるで 掌を返すみたいな 態度されても… 私の心は 元には戻れないわ。
『お袋は そういう 子供じみた性格だから。悦ちゃんは 無理して お袋と 仲良くしなくていいよ。』って 政之さんは 言ってくれたけど。
私は 昼間 義母と一緒にいるわけだから。あんまり ツンツンしていても 楽しくないじゃない?表面は 以前のように 接していたけど。わだかまりは ずっと 消えなかったわ。廣澤の義母に対して… ずっとね。」