首を探し当てた時は夢だったかのように布団の中で目覚めるが、この傷だけは現実のものとして残り続けるのだ。


とすれば、もしかしたら命さえも本当に奪ってしまうのかもしれない。


佳奈は全身にジットリと汗が滲んでいくのを感じていた。


下手をすれば殺されてしまうという恐怖を全身に感じていた。


両手でフルーツナイフを握りしめたとき、「来る」と、大輔が小さく言った。


次の瞬間だった。


黒い化け物がすぐ目の前にいた。


黒い化け物は動きが素早く、人間の目では追いつけないほどの速さで距離を詰めてくる。


こっちは常に警戒し、攻撃できる大勢でいなければいけないのだ。


「近い!」


佳奈が目を見開いて叫ぶ。


咄嗟に手を振り上げてフルーツナイフを振り回す。


しかし黒い化け物にはかすりもしなかった。


「この化け物が、邪魔だどけろぉ!」