それでも化け物たちは容赦なく近づいてくる。


距離を詰めることが得意な化け物だ。


佳奈は腰をかがめてナイフを力強く握りしめた。


一瞬で間合いを詰められるから、今から攻撃態勢に入っていないと間に合わない。


明宏は2人をかばうように立ち、両手でバッドを握りしめた。


その姿は当初よりも少し様になっているように見えた。


「明宏」


美樹が心配そうに声をかける。


その手には佳奈と同じようなナイフが握りしめられている。


「大丈夫。絶対に守るから」


その言葉に美樹は黙り込んだ。


不安そうに瞳を揺らしながらも目の前の自分の彼氏に誇らしさを感じている。


と、その瞬間だった。


さっきまで森の入口にいた黒い化け物のうち1体が明宏の目の前に移動した。