自分たちと同じ境遇に他人を立たせることで、自分たちは開放される。


明宏の考えたのはそういうことだった。


地蔵は自分たちをイケニエに選び、そこから脱するためのイケニエを更に選ぶということだ。


「イケニエのイケニエ」


佳奈が小さな声で呟いた。


それは誰かを犠牲にするということ。


自分たちと同じ苦しみと、意図的に他人に押し付けるということ。


そう思うと心がズッシリと重たくなる。


まるで鉛を飲み込んでしまったかのような不快感。


「そんなの無理だよ」


佳奈と同じように春香も苦しんでいた。


もう2度も首を取られている春香はその苦しみを佳奈よりも理解しているつもりでいた。


「じゃあ、一生抜け出せなくて良いのか?」


明宏の言葉に2人は同時にビクリと体を震わせた。


この悪夢が一生続いていくなんて考えられない。