「慎也……」


佳奈は慎也の部屋に入り、そっとクローゼットを開けた。


慎也の体はまだそこに横たわっていて、タオルケットごしに腹部が上下している。


佳奈はその胸に耳を当てて目を閉じた。


トクンットクンッ。


規則正しい心臓の音が確かに耳に聞こえてくる。


慎也は生きている。


生きているのに……!


同じ体勢のままキュッと下唇を噛み締めた。


痛いほどに噛み締めていると血の味が滲んでくる。


きつく閉じられた目の端から涙がこぼれて、タオルケットを濡らしていく。


「早く終わりたいよ、慎也……」


佳奈の切ない声が誰も居ない深夜の部屋に響いたのだった。