とにかく春香は生きていた。


他のメンバーも元気でなんの問題もない。


昨晩は不思議な経験をしたものの、今の自分たちにはそれがすべてだった。


重たい気分を払拭するためにもカラオケに行くのはごく当然の流れとなった。


「一番歌いまぁす!」


あれだけ顔色の悪かった春香が一番最初にマイクを取った。


大輔が完成を上げてシャンシャンとタンバリンを鳴らす。


アップテンポの曲が流れ出して場の空気は一気に盛り上がる。


佳奈は自分の好きな曲を選んで入れていく。


「よかったな」


慎也が元気いっぱいに歌っている春香を見て微笑む。


「そうだね。結局何事もなかったんだもんね」


佳奈は頷き、ほほえみ返した。


夏休み中なのに全然遊べていないと思っていたメンバーが、こうして見事に集まることもできた。


昨日の出来事はよくわからないままだけれど、自分たちにとってはいい経験になったのかもしれない。


それから3時間ほどみっちに歌った6人はようやくカラオケを後にしていた。


大きな声で歌いすぎて慎也と大輔の声は枯れてしまっている。