真っ黒で、首がない。


そう思ったが佳奈は口を挟まなかった。


みんな黙って、真剣に春香の言葉に耳をかしている。


「5人は私に近づいてきたの。なんだかすごく嫌な予感がしてすごく怖いんだけど、逃げることができなかった。金縛りにあったみたいに布団から起き上がることもできなかった」


春香は途中で呼吸を整えた。


夢の内容を思い出すだけで額に汗が滲んできている。


相当な悪夢だったに違いない。


「5人はとうとう私のベッドのすぐ横に立ったの。そして私のことを見下ろした。私は叫ぼうと思ったんだけど、声も出なかった。夢の中の私にできたことは必死に眼球だけ動かして、周りの様子を伺うことだけだった。


窓から月明かりが入り込んでいて、部屋の様子はうっすらと見えていたの。だから、すぐに自分の部屋だってわかったんだけどね。寝る前に読んでしまおうと思っていた文庫本がテーブルに出しっぱなしにもなってた。ほとんど現実と同じ状況だったの。だから5人の首のない人物の存在だけがファンタジーみたいだった」


一気に言ってしまってから大きく息を吐き出して水を一口飲む。


春香の説明はとても細かくて、夢に見た内容にしては鮮明過ぎた。